計算式と流出係数
質量流量は、次の式で表されます。
qm = C · Ev · ε · (π/4) · d² · √(2 · ΔP · ρ1)
- C:流出係数
- Ev = 1/√(1 − β⁴):接近速度係数
- ε:気体の膨張補正係数(液体では1)
- d:オリフィス開口径
- ρ1:上流条件の流体密度
- β = d/D:オリフィス開口径と配管内径の比
流出係数Cは、縮流や摩擦の影響を補正する係数です。 Reader-Harris/Gallagher式により、β比・レイノルズ数・タップ位置から算出されます。
Cはレイノルズ数に依存しますが、そのレイノルズ数は求めたい流量そのものに依存します。 本ツールでは、固定小数点反復法によりCと流量を同時に収束させています。 同心オリフィスのCは、概ね0.6前後の値をとります。
ISO 5167 / JIS Z 8762 と API MPMS 14.3 / AGA-3
本ツールは、2つの準拠規格を選択できます。
ISO 5167-2(およびこれと同一の数値係数を用いるJIS Z 8762-2)は、国際標準として化学・石油・一般産業で広く使われます。 コーナータップ・フランジタップ・D-D/2タップに対応しています。
一方、API MPMS Ch.14.3.1 / AGA Report No.3は、北米の天然ガス取引計量で標準的に使われる規格です。 ISOとは異なる回帰係数を用いる独自のReader-Harris/Gallagher式(フランジタップ限定)を採用しています。 また、上流基準の膨張係数Y1を用います。
同じβ比・レイノルズ数でも、両規格で流出係数がわずかに異なります。 用途や取引要件に応じて、適切な規格を選択してください。
β比と適用範囲
β比(絞り直径比)は、流量計測の精度に大きく影響します。
βが小さすぎると、差圧が過大になり永久圧力損失が増えます。 βが大きすぎると、流出係数の不確かさが増大します。
ISO 5167-2はβを概ね0.1〜0.75で規定していますが、実用的な推奨範囲は0.2〜0.75です。 本ツールもこの範囲を外れると、警告を表示します。
気体を扱う場合は、差圧比 ΔP/P1 が膨張係数式の適用範囲(API方式では0〜0.25)を超えないことも確認してください。
なお、ISO 5167-2に規定される小口径(呼び径D<71.12 mm)の補正項は、本ツールでは省略しています。 そのため小口径では、参考値としての精度に留まる点にご注意ください。
レイノルズ数の適用下限と高粘度・低流量流体
流出係数Cを与えるReader-Harris/Gallagher式は、実験データに対する回帰式です。 その回帰の土台となったレイノルズ数の範囲を外れると、精度は保証されません。
ISO 5167-2は、管内レイノルズ数ReDの下限を規定しています。 β ≤ 0.56 では ReD ≥ 5,000、β > 0.56 では ReD ≥ 16,000 · β² を満たす必要があります。 高粘度の油やスラリー、あるいは設計流量に対して管径が大きすぎる低流量域では、この下限を下回りやすくなります。
ReDが下限を下回る領域では、オリフィス板前後の流れが層流ないし遷移域に近づきます。 縮流の様相そのものが変わるため、Cの不確かさが規格の想定(概ね0.5〜0.7%)を大きく超えます。 本ツールは計算結果としてレイノルズ数を表示しますので、必ず上記の下限と照らして確認してください。
下回る場合は、オリフィスではなく低レイノルズ数域に適した絞り機構への変更を検討することが実務的な解決になります。 代表例は次のとおりです。
- クォドラントエッジオリフィス
- コーン形絞り
- 容積式・コリオリ式流量計
なお本ツールは、流出係数Cとレイノルズ数の相互依存を固定小数点反復で解いています。 極端な低レイノルズ数域では、反復が収束しないことがあります。 その場合、結果に「流出係数の反復計算が収束しませんでした」と表示されます。この表示が出た結果は使用しないでください。
計装計算を組み合わせて設計する
オリフィスは差圧を生じさせるため、恒久的な圧力損失(永久圧力損失)が発生します。
系全体の圧力配分を検討する際は、配管圧力損失計算でオリフィスを含むラインの損失を評価してください。
同一ラインに調節弁を設ける場合は、調節弁 Cv計算で弁に配分できる差圧を確認してください。オリフィスと弁の差圧配分のバランスを取ることが、 安定した流量制御と計測精度の両立につながります。
よくある質問(FAQ)
- Q. オリフィス流量計算とは何ですか?
- 配管内に開口部をもつ薄い板(オリフィスプレート)を挿入し、流れを絞ることで生じる差圧から 流量を求める、最も広く使われる差圧式流量計測法です。構造が単純で可動部がなく信頼性が高い ため、プラントの流量計測に広く使われます。本ツールは同心オリフィスを対象に、質量流量・ 体積流量・流出係数C・管内レイノルズ数・β比を算出します。
- Q. β比はどの範囲にすべきですか?
- ISO 5167-2ではβを概ね0.1〜0.75で規定しますが、不確かさを抑える実用的な推奨範囲は0.2〜0.75です。 本ツールもこの範囲外で警告を表示します。
- Q. ISO 5167とAPI/AGA-3の違いは何ですか?
- 回帰係数と膨張係数の式が異なります。ISOはコーナー/フランジ/D-D/2タップに対応、API/AGA-3は フランジタップ限定で北米の天然ガス計量に用いられます。
- Q. 流出係数Cとは何ですか?
- 理論流量に対する実流量の比で、縮流や摩擦を補正します。同心オリフィスでは概ね0.6前後で、 β比・レイノルズ数・タップ位置に依存します。
※ 本ツールの計算結果は参考値です。取引計量など高精度が要求される用途では、規格原典と有資格者による 検証を必ず行ってください。詳しくは免責事項をご確認ください。計算式の検証範囲は計算検証記録で公開しています。